パナソニック中期計画、2015年度に赤字事業をゼロに
さらに事業部制を復活させ、88のビジネスユニット(BU)を49事業部に再編して、各事業部には5%以上の営業利益率を課していく。
13年度は、営業利益2500億円、当期純損益は500億円の黒字(12年度は7650億円の赤字)を計画する。15年度に3500億円以上の営業利益計上に向け、赤字事業の止血で1300億円の改善、各事業部に5%以上の営業利益率を課すことで1400億円の改善をそれぞれ目指す。
創業者の故・松下幸之助氏が導入した事業部制は、中村邦夫前会長が社長だった91年に廃止したが、4月から復活する。各事業部には開発・生産・販売の機能を付与して決裁権限を委譲し、意思決定の迅速化を図る。
記者会見した津賀一宏社長は「中期計画では売り上げ目標は意図的に作らなかった」と述べ、規模拡大よりも利益を重視する経営を打ち出した。それぞれの事業部には「当然、売り上げ目標はあるが、それの積み上げをマクロのパナソニックの計画にはしなかった」という。
一方で、15年度の営業利益計画には「事業リスク」を1000億円以上織り込んだ。津賀社長によると、中期計画は各事業部に自主的に「決意」として提出を求めた結果であり、達成できないリスクを織り込んだという。このため、「うまくいかなければ中期計画そのものを見直す」と述べ、柔軟な対応をしていく方針を示した。
中期計画の想定為替レートは1ドル85円。現状の水準と比べ円高の想定だが、津賀社長は「事業構造は複雑で円安に振れたから利益が上振れするわけではない。円安でネガティブな方向にいく事業とのバランスもあって、一概に計画に織り込むことはしていない」と述べた。
<テレビなど5事業の赤字解消>
津賀社長は、中期計画の営業利益目標の達成に向けて「やるべきことは一刻も早く赤字事業をなくすことだ」と強調した。同社が初めて公表したテレビ事業の赤字は11年度に2100億円で、12年度に860億円の見通し。これを13―14年度の2年間で構造改革を進め、15年度に解消を目指す。半導体事業の赤字は、富士通(6702.T: 株価, ニュース, レポート)と合意したシステムLSIの事業統合を進めるとともに、システムLSI以外の部分でも他社との提携を検討していく。
テレビ、半導体、携帯電話、回路基板、光ドライブ・光ピックアップ事業の「赤字5事業」には、13―14年度の2年間で2500億円の構造改革費用を計上し、15年度に「赤字事業部をゼロにする」(津賀社長)ことを目指す。
不採算のプラズマテレビについては、事業継続を前提に計画を立てたという。ただ、「撤退の可能性はある」とも指摘した。携帯電話も継続が前提で、「事業撤退の安易な選択肢はとらない」と述べたが、「撤退は最後の最後の判断になる」と語った。
不採算のプラズマテレビについては、事業継続を前提に計画を立てたという。ただ、「撤退の可能性はある」とも指摘した。携帯電話も継続が前提で、「事業撤退の安易な選択肢はとらない」と述べたが、「撤退は最後の最後の判断になる」と語った。
<ヘルスケア事業に外部資本を導入>
一方で、「脱自前主義」による効率化を求めるため、ヘルスケア事業の医療関連部門については外部資本を導入する計画。4月から津賀社長の直轄プロジェクトとして推進し、13年度末までに、血糖値センサーや電子カルテシステム、補聴器を手掛ける「パナソニックヘルスケア社」の株の一部売却を目指す。
同日、物流事業の100%子会社であるパナソニックロジスティクス社(大阪府摂津市)の株の66.6%を日本通運(9062.T: 株価, ニュース, レポート)に譲渡することも発表した。従業員1200人で、2011年度の売上高は730億円の規模の事業で、5月末の契約を目指して協議を進め、7月の売却を目指す。
<3年で6000億円のキャッシュ創出>
手元資金から借金を差し引いた「ネット資金」は12年度末に7700億円のマイナスの見通し。中期計画ではネット資金のマイナス解消に向け、利益の積み上げや設備投資の抑制などで毎年度2000億円、3年累計で6000億円のフリーキャッシュフローの確保を目指す。
この間、5000億円の社債の償還で、有利子負債は12年度の1兆1700億円見込みから、15年度には6200億円まで圧縮する。株主資本の改善も課題で、12年度に50%のマイナスになる見通しのROE(株主資本利益率)は、15年度に15%以上になることを計画。株主資本比率は12年度に20%程度だが、15年度に25%を目指す。
<大坪会長、退任へ>
同社は、6月26日の株主総会で、前社長の大坪文雄会長が退任することも発表した。後任会長は、長栄周作副社長(エコソリューションズ社社長)が就任する予定。津賀社長によると、大坪会長は3月に辞任の意向を示すとともに、中期計画とともに会長退任を発表することを望んだという。
大坪会長は、中村氏の後を継いで06年6月から12年6月まで社長を務めたが、プラズマパネル工場や三洋電機の買収など大型投資を実施して減損処理に追い込まれるなど、11年度と12年度の巨額赤字の要因を作り出していた。中期計画は、旧パナソニック電工社長だった長栄氏が会長として津賀社長を支えていく体制になる。
パナソニックは、ニューヨーク証券取引所に上場廃止の申請をすることも明らかにした。1971年に上場したが、国際知名度向上などの目的は達したと判断した。4月上旬に通知して、下旬に上場廃止を完了する見込み。これにより、上場している海外取引所はなくなる。
BYロイターニュース