パナソニックが新スローガンに込めた経営理念を読み解く
このブランドスローガンには、抑揚のある曲線を生かしたオリジナルフォントを開発してこれを採用。「変革の象徴という思いを込めるとともに、独自性、親しみやすさを演出した」という。
今回のブランドスローガンとともに、そのベースとなるブランドプロミスも変更した。パナソニックではブランドプロミスを「パナソニックのお客様へのお約束」と位置付け、「私たちPanasonicは、より良いくらしを創造し、世界中の人々のしあわせと、社会の発展、そして地球の未来に貢献しつづけることをお約束します。」という理念を込めた。
パナソニックでは従来、2018年までに目指す姿として「環境革新企業」という言葉を使ってきたが、今後はこれを使わないこととした。この理由に関して同社では「『A Better Life, A Better World』は、環境革新企業の意味まで包含することになる」と説明する。
「A Better Life, A Better World」の新スローガンは、2013年4月19日に大阪・梅田のグランフロント大阪にオープンしたパナソニックセンター大阪のオープニングセレモニーで、津賀一宏社長が発言したのが最初だ。
このとき津賀社長は、この言葉の意味を次のように語った。
「パナソニックは事業を通じて、世界中の人々の暮らしの向上と社会の発展に寄与することを基本としてきた。常に人を中心とし、その暮らしをみつめ、より良いものにしていくことが、今も昔も変わらないパナソニックの原点である。パナソニックが目指しているのは、お客様にとって良い暮らしを、あらゆる空間に広げていくこと。お客様が生活する様々な空間で、ビジネスパートナーとともに、お客様ひとりひとりのより良い暮らしや、より良い社会の実現を目指す。日本のみならず、アジアや世界中の人々の『A Better Life, A Better World』の実現につなげたい」
実は、ビジネスパートナーというところにひとつのポイントがある。ここでは、「BtoC」だけでなく、「BtoB」という意味も込められているからだ。
これまで同社が掲げてきた「ideas for life」というブランドスローガンは、2003年5月から約10年に渡って使用されてきたものだ。「life」に「お客様の暮らしに貢献する」という意味を込めていた点では、新ブランドスローガンが示す意図と同じである。そして「ideas」という言葉には、日本人が感じるような「思いつき」というイメージではなく、ギリシャ語のイデアに示されるように、概念やフィロソフィという意味を持たせた。
だが、ここでフォーカスしていたのはBtoCの事業領域だったといえよう。
2012年6月に津賀社長体制となって以降、パナソニックはBtoB事業に力を注ぐ姿勢を明確にしている。同社では、「『ideas for life』から『A Better Life, A Better World』への変更は、経営理念を短く表現した点では同じだが、lifeが示す『より良い暮らし』だけでなく、Worldという『より良い世界』を示す言葉を入れたことで、BtoCだけでなくBtoBに活動領域を広げたことを表現した」と説明する。
続けて、「住宅、社会、ビジネス、旅、自動車など多様な空間・領域で、様々なパートナーとお客様一人ひとりにとっての『より良い暮らし』を追求し、広げていくと共に、地球環境への貢献をはじめ、グローバルに『より良い世界』の実現に貢献していくという、BtoBとBtoCの両事業のイメージを表現したメッセージ」とする。
パナソニックは、2期連続で7,000億円を超える巨額な最終赤字を計上している。
同社では、「いまこそ、社員が同じ方向性をもって、力をあわせる必要がある。いまが新たなブランドスローガンを再設定する最高のタイミング。パナソニックがなにを目指し、どう変革するのかということを、社内、社外に対して発信し、関係者と方向性を共有するには、新たなブランドスローガンが必要だった」と説明する。
津賀社長は、パナソニックが目指す姿として、「ユニークな会社」という言葉を時折使う。今回のブランドスローガンについても、やはり「ユニークな会社」という表現が用いられている。
「私たちは、お客様に感動、共感いただけるパナソニックに変革していくことをグローバルに宣言し、世界に類のないユニークな会社として力強く復活することを目指します」と、今回のブランドスローガンをもとにして、復活宣言する。
まずは赤字事業の撲滅が鍵。ユニークな会社への取り組みは、その先の重要なテーマとなる。
byナビニュース