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by syojyu-hansin

パナソニック「自動車と住宅」社運を懸けたツートップ戦略【1】

 明日のNOⅡではエコソリューション、パナホームの記事掲載します。

脱・白物家電、「BtoB」事業に集中投資の勝算は――。2期連続で計1兆5000億円を超える最終赤字、63年ぶりの無配。パナソニックが置かれた立場は、「瀕死」の状態だ。そこからの復活に津賀社長が懸けたのは、得意の「白物家電」とはまったく異質の分野だった。

「普通の会社ではない状態」
パナソニック「自動車と住宅」社運を懸けたツートップ戦略【1】_f0222687_1729950.jpg「2年連続の大幅な赤字となり、無配という苦渋の決断をすることになった。株主に配当ができない状況に対して、経営陣一同責任を感じている。ここに深くお詫びする。誠に申し訳ありませんでした」

2013年6月26日、大阪市中央区の大阪城ホールで開催された第106回定時株主総会の冒頭で、パナソニックの津賀一宏社長は、雨の中集まった約4500人の株主を前にして、深々と頭を下げて陳謝した。

パナソニックは、11年度の7722億円の最終赤字に続き、12年度も7543億円と、2期連続の大幅な最終赤字を計上した。無配は63年ぶりのことだ。

「要因は経営環境の厳しさもさることながら、パナソニックが抱える構造的な課題にも起因する」と津賀社長は語る。

パナソニックが抱える構造的な課題とはなにか。津賀社長は、こう分析する。

パナソニック「自動車と住宅」社運を懸けたツートップ戦略【1】_f0222687_17312351.jpg 「ビジネスの中心が、家電市場や、日本国内市場のままである。研究開発投資も大きな成果を生まずに、構造改革を行っても一時的な良化に留まり、再び利益が低下するというサイクルに陥っている点にある。デジタル化に向けた大規模な投資を行ったが、投資判断に課題があり、思ったほどのリターンを生めず、市場環境の変化への対応にも課題があった」

そして、この状況を津賀社長は、

「普通の会社ではない状態」

と、いう。社長就任から9カ月たった13年3月。津賀社長は、15年度を最終年度とする中期経営計画「CROSS-VALUE INNOVATION 2015(CV2015)」を発表し、「赤字事業をなくすこと、将来を見据えて自分たちが力強く進んでいける道筋をつけることに不退転の決意で臨む」と宣言した。

パナソニック「自動車と住宅」社運を懸けたツートップ戦略【1】_f0222687_17353550.jpg 売り上げ目標は明示せずに、営業利益で3500億円以上、営業利益率で5%以上、フリーキャッシュフローで3年間累計6000億円以上を目指すことを掲げたのだ。その中で打ち出したのが、パナソニックの成長の軸をBtoB(企業と企業の取引)に置くことだ。

読者の多くがパナソニックに対して持つ印象は、テレビメーカーであったり、かつての「ナショナル」ブランドから続く、白物家電メーカーといったものだろう。だが、津賀社長は、

「これは正しいパナソニックの姿ではない」

という。実際、12年度の業績のうち、BtoC事業は、全体の約3分の1でしかない。裏を返せば約7割がBtoBである。売り上げの構成比だけから見ても、パナソニックの得意分野は、BtoB事業であろう。

津賀社長は、中期目標として、「パナソニックの創業100周年となる18年度までに、自動車関連事業で2兆円、家電を除く住宅関連事業で2兆円の売上高を目標とする」と打ち出した。いずれも、現在のそれぞれの事業規模の約2倍となる目標で、自動車・住宅を合わせた売上高構成比は、パナソニック全体の売上高見通しの「約半分」を占める。津賀社長は、パナソニックの中期的な成長と収益改善を、「自動車関連事業」と「住宅関連事業」の2つの事業に懸けると決めたのだ。

「自動車産業と住宅産業に強いパナソニック」

これは、5年後に創業100年を迎えるパナソニックの姿となる。

では、なぜ、パナソニックは自動車関連事業と住宅関連事業を、今後の成長戦略の柱に位置づけると決めたのだろうか。

パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(以下、AIS社)の山田喜彦社長は、

「自動車関連事業の成長には、津賀の強い意志が入っている」

と前置きし、「ここは、パナソニックの強みが生かせる領域のひとつ。BtoBの先兵役として、新たなパナソニックグループの成長エンジンになる」と意欲を見せる。

自動車と住宅に強いパナソニックを創出
AIS社は、13年4月の組織再編で発足した社内カンパニーで、これまでオートモーティブ事業を担当していたパナソニックオートモーティブシステムズ(PAS)を母体に、小型2次電池や電子材料などを統合してできた。車載分野や産業分野、ICT分野に対して、材料からデバイス、システムに至るまでの製品群を持つのが特徴だ。AIS社の12年度の売上高は2兆5180億円で、自動車関連事業は約1兆円である。

パナソニックが、自動車関連事業にフォーカスする理由はいくつかある。

1つは、今後も自動車産業の成長が見込まれ、電気自動車をはじめとする環境対応車の増加が予測されているからだ。

現在、全世界の自動車生産台数は、年間8400万台。これが20年には、新興国での販売増加などを背景に、1億台になると予測されている。世界規模での成長が見込まれているのだ。その中で、現在、アイドリングストップ車などの環境対応車は約12%だが、今後5年間で全体の3分の1を占めるといわれている。

「自動車の全部品に占める電気関連部品の比率が増加するのは明らかで、それはパナソニックが、“お役立ちできる”領域が増えることを意味する」(山田社長)

パナソニックは、世界ナンバーワンシェアの自動車向け部品を数多く抱える。
2つ目は、パナソニックにとって、海外事業構成比を高める余地が大きい点だ。パナソニックの自動車関連事業の構成比は日系企業向けが約6割。世界市場の中では、日本の自動車メーカーのシェアは3割弱。ここからも、海外メーカーに販路を拡大する余地がある。山田社長は、

「欧米基軸での事業構築、新規顧客の開拓がカギ。脱日本発想での取り組みを進める」

という。そして、3つ目は、複数のビジネスユニットが、AIS社に統合されたことで、「付加価値のある提案」ができるようになった点だ。

AIS社では、PASで取り扱っていたカーナビや電装システムなどの製品群に加え、旧エナジー社が担当していた車載電池や、旧デバイス社のセミコンダクター、回路部品などを統合した。AIS社を構成する17事業部のうち、なんと15事業部が自動車関連事業に関与するのだ。山田社長は、

「PASはビジネスユニットの1つであり、開発リソースも限定され、組織の壁を越えられない“課題”があった。しかし、AIS社はカンパニーという大きな枠で自動車関連事業に取り組む。これまでの体制とは状況がまったく異なる」

離れた場所から自動車のエンジンを始動させ、乗車前の暖気運転などを可能とする「スマートエントリーシステム」は、電装システム事業部、機構部品事業部、エコソリューションズ社(以下、ES社)がそれぞれ担当した部品を採用。従来のPAS単独の体制では提案しきれなかったシステムである。

今後、AIS社が目指す戦略は、付加価値の高い「Tier1」としての存在感を高めていくことだ。自動車産業は、自動車メーカーを頂点に、Tier1、Tier2、Tier3のピラミッド構造を形成。「Tier1」は、自動車メーカーに対して部品やシステムを直接納入するサプライヤー。

「Tier2」は、Tier1を通じて自動車メーカーに構成部品を納入するサプライヤー。

「Tier3」は、Tier2およびTier1を通じて、素材や部品を自動車メーカーに納入するサプライヤーである。現在、パナソニック「Tier1」販売構成比は、15%強。これを拡大するため、現在58%のシステム事業の割合を、7割程度にまで引き上げる方針だ。

AIS社オートモーティブ営業本部電装システム推進グループ・岡嶋理グループマネージャーは、こう説明する。

「今、自動車メーカーは、売れるクルマを短期間に商品化したいため、ベストなサプライヤーに、“任せられるところは任せたい”と考えている。システムのすべてをパナソニックが担当できれば、最適な設計提案が可能になる」
これまで快適分野、電動化分野、安心・安全分野に、個別展開してきた製品を、システムとして練り上げ、“価値のあるソリューション”として提案していくのが、AIS社という新たな組織の狙いだ。

実は、パナソニックの社内には「試作車」と呼ばれるクルマが存在する。市販されたEV(電気自動車)をベースに、パナソニックのシステム製品を組み込んだクルマに改造し、品質や耐久性などの実験を繰り返しているのだ。自動車メーカーさながらの取り組みからも、パナソニックのシステム提案の本気度が伝わる。

さらに山田社長は、

「Tier1のビジネスは18年までに2倍以上の成長を見込むが、Tier2、Tier3でも2倍の成長を計画している」

とし、熱に強い基板をつくるための「材料」や、センサーなどの「部品」を、パナソニックならではの商品として、サプライヤーに積極的に供給していく。

自動車関連事業の中で注目すべきは、AIS社の中に設置された新規事業本部だ。山田社長が兼務で本部長を務める組織で、「年間100億円、5%以上の利益率が見込める事業の創出」を目指す。約400人の人員のうち、半分が自動車関連事業に携わることになる。

津賀社長から示された、「18年度までに2兆円」という同事業の倍増計画について山田社長は、こう自信を見せる。

「市場の成長性、環境の変化、そしてパナソニックの事業体制が大きく変わったことを考えれば、“やらなくてどうするんだ”という数字。これから3年間のビジネスはほとんど決まっている。今はその3年後以降のビジネス、つまり、16~18年に向けた商談を始めているところ。強い手応えを感じている」
                              byプレジデント
by syojyu-hansin | 2013-10-05 21:58 | パナソニック