今どきジャズ
読売新聞ではJazzにこり始めた女性たちの紹介している
静かなブームなのが米国のピアニスト、ビージー・アデール。東京・銀座山野楽器本店では輸入盤、国内盤を合わせ1万6000枚のCDが売れ、ビージーの「マイ・ピアノ・ロマンス」(EMI)は、同店の上半期、売り上げ1位のアルバムとなっている。
「周りにいるOLの友達やJ―POPを聴いてきた人たちも、新しい音楽を探している。ジャズには興味があるけど、何から聴けばいいのか分からない、という人が多かった。最初は有名作など“王道の作品”を紹介していたけれど、なかなか魅力が伝わりにくい。生活の中にどう音楽を取り入れていくのか。それを提示したかった」
ジャズへの追い風を最大限に生かそうと、レコード会社も相次いで戦略を打ち出している。8月に出した「THIS IS JAZZ ベスト&グレイテスト」が、累計3万枚を出荷するヒットとなったEMIミュージック・ジャパンの廣瀬裕子さんは、「女性が手に取りやすいように、化粧品みたいに、キラキラしたパッケージにこだわった」。アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの「モーニン」やチェット・ベイカーの「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」など、有名曲やCMで使われた楽曲を収録。2枚組みで2500円という手頃な価格も功を奏した。
同社では昨年からジャズの名門レーベル「ブルーノート」の名作を1100円の特価で売り出し、累計65万枚のヒットになった。今年9月からは、ブルーノート以外のレーベルの作品を999円で、「ジャズ名盤 ベスト&モア」のタイトルで売り出している。
シンプルなピアノ…ビージー・アデール
72歳で日本デビューしたビージー・アデール。人気の高まりに、「なぜこれだけヒットしたのか分からない」と戸惑いながらも、うれしそうだ。
子供時代からピアノを始め、テネシー州ナッシュビルを拠点に活動を続けてきた。ジョニー・キャッシュやドリー・パートンといった大物とも仕事をしてきた。1980年代から90年代は、広告のための音楽作りに取り組み、現在のトリオを結成。リーダー作を出した。
演奏については明確な考え方がある。「(歌手の)ペギー・リーやフランク・シナトラは、作者が書いた楽曲のエッセンスに敬意を払い、シンプルに分かりやすく伝えた。自分もそういう気持ちで演奏したい。ライブも自分に注目してほしいわけじゃない。音楽を聴く場だと思っている」
「マイ・ピアノ・ロマンス」は、彼女のこれまでの作品の中から、日本のスタッフが選曲して生まれたアルバムで、親しみやすいピアノのアレンジが光る。「すごく曲の流れがいい」と本人も気に入っている。
「サンタが町にやってくる」「ジングル・ベル」や山下達郎の「クリスマス・イブ」などを収録した「マイ・ピアノ・クリスマス」(EMI)も発売中だ。
自分の解釈で歌う…ヘイリー・ロレン
5月発売の日本デビュー作「青い影」(ビクター)が好調に売れているヘイリー・ロレンは、米国出身の若手ジャズ・ボーカリスト。やはり「日本でこんなに売れるとは予想外だった」と話す。
「枯葉」や「サマータイム」などを収録。渋い選曲だが、「自分は間違った時代に生まれたんじゃないかと思う。こういった大人の音楽に共感する」と笑う。
両親の影響でジャズやカントリーに子供の頃から親しんだ。影響を受けたのはナット・キング・コールやダイアナ・クラールといったジャズ系のアーティスト。「ジャズを歌うのは簡単じゃないけれど、難しさみたいなものを楽しんでいる」
ロックバンドのU2やキンクスの曲も、落ち着いたジャズ風のアレンジで聴かせる。「自分の印を付ける感じで楽しい。音楽は自由なアートだと証明できるし、聴き手も新たな発見があるはず。ジャズはいろんな意味で、自分の解釈を音楽で出していくことだと思う」
10月には新作「アフター・ダーク」(同)、11月にも「クリスマス・コレクション」(同)を出している。
(2010年12月3日 読売新聞)
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