葉室麟「橘花抄」
黒田騒動後の福岡藩で 権力争いに奔走し巻き込まれる男たちの
影で翻弄される女たちを実在の人物を織り込みながら描く。
香道の名前だけを聞いたことがある程度の私にその奥の深さを教えてく
れる。当時の武士、女性の価値観、考え方、文化、社会のからみを
巧妙な筆致で表現。特に精神的に奥が深そうな描写が良かった。
主人公の卯乃が目が不自由と言うこともあり、匂いが話を展開する
上で重要なポイントとなる。
時には心落ち着かせ、時には危難を察知する。
女性陣は愛情豊かで凜としていてるし、卯乃を取り巻く男性も強さ
と優しさを兼ね備え好感が持てる。
茶道や和歌、花などを基にした描写も良いし、逆境に立ち向かう
台詞もお互いを思いやる絆も心地良い。
権力闘争など色々な要素を盛り込んでいますが、ドロドロしたとこ
ろは無くスッキリとして読後感も良いです。
新潮社 1890円
by管理人