光圀伝 冲方丁
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作者:冲方丁(うぶかた・とう) 出版社:角川書店
家康の孫・光圀は、『大日本史』を編纂することで水戸徳川家に尊皇の思想を植え付けた始祖で「大義のひと」として描かれる。いや「なぜ大義のひとであらねばならなかったか」が主要テーマといっても過言ではない。そして光圀の出自にかなりのページが割かれている。光圀の原点を克明に描くことで、「苦悩の幼・青年期を経て名君となった克己のひと・光圀」像を際立たせているのだ。
光圀は水戸藩徳川頼房の三男。優秀な兄・頼重がいた。だが父が後継ぎにしたのは光圀で、その「ねじれ」に光圀は苦しむ。なぜ自分なのか? その苦悩が学問への志向、詩作(ここで光圀は朝廷とのパイプを築く)への傾倒、友や師匠を求める心(宮本武蔵なども登場)、に向かわせる。また反動としての乱行も起こす。いわゆる型破りの風雲児であった。この「ねじれ」を物語の鍵として、著者は「光圀の大義」を解こうとする。まず自らのねじれた立ち位置を正せば、ひとの大義とは、世の大義とは、と広がり、そして自らへと還り為政者の大義とは、とつながっていくだろう。