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by syojyu-hansin

自分や家族が、がんと診断されたとき――知っておきたい がん医療の基礎知識

自分のがんでも、家族の場合でも、いちばん大切なことは正しい情報を得ること。この記事では、健康なときに一度は読んでおきたいがん医療の基礎をまとめた。
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厚生労働省がまとめた国内のがんの罹患率を、年齢別、性別に見ると、女性では30代から罹患率がゆるやかに上昇していくのに対して、男性では40~45歳の間に急カーブを描き上昇する。自分のがんリスクが高まるのはもちろん、同僚、友人、両親ががんと診断されることも増える。

 はじめて「がん」という病気に向き合うとき、どんな知識があれば冷静な対応ができるだろうか。今では日本人男性の死因の54%ががん。40代になったら、一度はがん医療について基礎的なことを学んでおきたい。

患者と医師が二人三脚で進めていくがん医療
 体の不調で精密検査を受けた後、医師から「あなたの病気はがんです」と告げられたら、誰でも頭が真っ白になるだろう。強い不安を感じ、仕事も手がつかなくなる。

 胃がん治療の第一人者である、がん研有明病院の山口俊晴副院長は「がんといっても病態はさまざま。精密検査の結果が出るまでは心配しすぎないこと」と話す。例えば、患者数の多い胃がんや大腸がんは、治療法の進歩により早期に発見されればほとんどの人にとって治る病気となっている。

 がんと診断されたとき、医師からはさまざまな説明を受けるが、きちんと理解しておきたい項目を下表にまとめたので、これだけは確認を。現在では、がん医療は専門家がすべてを決めるのではなく、医師から受けた情報を元に患者と医師が相談しながら選択するものであるという考え方が広まっているからだ。

 主治医の説明だけでは理解しにくいこともある。そのため国が整備しているのが、がん医療の相談事業だ。がん治療を行う医療機関は数多いが、中核を担う病院として「がん診療連携拠点病院」が指定され、そこに「相談支援センター」が設置されている。ここでは、病気のことだけでなく医療費から休職のことまで幅広い問題について相談にのってくれる。また、がんの宣告により精神的な安定を損なった人のための、メンタルサポートの体制も整備されつつあるので、積極的に相談してほしい。

がんの種類によって最適な医療機関を選ぶ
がんの種類によって最適な医療機関を選ぶ

 どの病院で治療を受けるべきか。これも患者にとって最初に悩む問題である。大学病院なら安心なのか、それとも家族の介護の負担を小さくするため地域の病院がいいのか……。

 山口副院長は「大学病院やがんセンターが、すべての患者にベストな治療を提供できるわけではない。現在では、地域の急性期の病院も手術治療の内訳を見ると、がん患者が多くなってきている。自分のがんについて、一定以上の年間の症例数をこなしているならば、安心して治療を受けられる」と話す。現在では、年間手術数などをホームページで公開しているので判断材料の一つとなる。

 では、どのような場合に、がん診療拠点病院など専門性の高い医療機関を選ぶべきか。それはがん治療の難易度と関わっている。山口副院長は、白血病など最新の化学療法を必要とするがん、食道がんや肝臓がんのように高度の外科技術を要するもの、すい臓がんや肺がんなど治療成績の悪いもの、骨肉腫など整形外科領域のがんや、喉頭など頭頸部の頻度が低く特殊な技術を要するがんが、こうしたがんに当たるとアドバイスする。
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◎ がん治療の基本となる3治療の基礎用語
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 がんの不安を克服し、医療機関も決めた。自分のがんとしっかり向き合っていくことを決めた後は、いつ、どのような治療を受けるべきかを主治医と相談し、自分で決めることになる。

 現在のがんの治療法は、上表に示したように、大きく「手術治療」「放射線治療」「化学療法」の3つに分けられる(上表)。ほとんどのがんでは、体内にできたがん組織を手術で切除する治療が中心となる。しかし、手術が難しいがんに対する放射線治療、化学療法の進歩にも著しいものがある。

 そこで、最近では集学的治療といって、手術治療を中心としながらも、がんの状態に応じてこれらの治療を組み合わせて行うことが増えてきた。治療中の患者の苦痛を和らげるための「緩和医療」も医療の重要な役割と考えられている。そのため、現在では多くの病院で患者一人ひとりに、外科医、放射線科医、腫瘍内科医、看護師、薬剤師などがタッグを組む「チーム医療」の体制が組まれている。

 まさに、高度かつ複雑な現代のがん医療。素人である患者の理解を超えていると悲観しがちだが、治療法選択のよりどころとなるのが「標準治療」の考え方だ。世界各国で行われている臨床試験の成果をまとめ、患者の負担を最小限にしながら、治療効果を最大限にできる治療法を科学的に評価したものである。

 そして標準治療を基準に治療法を解説したガイドラインもある。がん治療のなかで、最も最初に治療ガイドラインが整備されたのが山口副院長も参加してつくられた『胃癌治療ガイドライン』だ(下表)。2001年に初版が出版され、最新版は2010年に改訂されている。

 現在では、患者や家族を対象として分かりやすく書かれた本も発売されている。山口副院長は「主治医の説明をひと通り受けた後、ガイドラインを読むと理解しやすいだろう。理解してほしいのは、標準治療はあくまでも基準であり、患者の体力、合併症の有無、年齢など総合的に判断して治療法は選択すべきであること」と話す。だからこそ、患者自身の声を伝えていくことが大切なのだ。
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10年で大きく進歩した日本のがん医療
 山口副院長は「この10年で、日本のがん医療は大きく進歩した」と話す。

 下グラフに示したのは、がん研有明病院における現在の胃がん治療の成績だ。がん医療では、治療後5年間生存していることを「治った(完治)」と判断する。早期がん(病期I A)の5年生存率は、97.4%。事故や別の病院で亡くなった人も含んでいるので、実質的にはほぼ100%の人が「早期がんを克服」したことになる。

 また、かなり進行したがんでも約半数の人が5年以上生存し、末期(病期IV)と呼ばれる場合でも、10%前後だが生存者は存在し、緩和ケアなども充実してきている。

 医師と患者、看護師、薬剤師などのスタッフがよき『相棒』となってとりくむ現在のがん医療。その基礎知識を身につけておくことは、実りある40代、50代以降のために不可欠だ。
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がんの最新治療を知る
 患者の誰もが思うことは現時点での最新治療を受けたいということだ。がん治療は日々進歩しており新たな情報を入手しておく必要がある。ここではがんの3つの治療法について最新の動向をまとめた。

 がんの最新治療というと「先進医療」という言葉を思う浮かべる人が多いだろう。現在の日本の保険医療制度では、保険外の治療の併用を原則禁じているが、厚生労働省が医療機関ごとに認める先進医療では、保険医療と全額自己負担となる新治療法を組み合わせることが可能になる。がん治療では粒子線治療などがこれに該当する。

 ただし先進医療が必ずしもがんの最新治療を代表するものではない。日本では、ここで紹介するような最先端治療の多くが、健康保険の適用になっていることも知っておきたい。

【手術治療の最前線】体の負担の小さい腹腔鏡手術が普及
 手術治療の分野では、腹腔鏡を用いた手術が急速に普及している。がん研有明病院でも、胃がんの手術に腹腔鏡を用いる例が、2010年までの5年間に約4倍となった(左下グラフ)。

 腹腔鏡は内視鏡の一種。腹腔とは肝臓や腸などの消化器や子宮、卵巣などを収めているお腹の内部空間で、ここを腹腔鏡はモニターに映し出す。腹腔鏡下手術では、まず腹腔に炭酸ガスを注入して十分に空間を広げ、数カ所開けた小さな穴(5~12mm)から腹腔鏡や特殊な手術器具を入れ、医師がモニターを確認しながら手術を行う。

 腹腔鏡手術は、従来の開腹手術と比較して傷跡が小さい分、術後の痛みが少なく回復も早い。臓器が外気に触れないため傷口の癒着などが少ないという研究報告もある。術後の入院期間が短くなり、仕事を長期間休めないビジネスマンなどにはメリットの多い治療法だ。

 かつては、比較的簡単な手術に用いられてきたが、最近では開腹では難しい深い部位の臓器など、直接目視しにくい部分を良く見て手術できることが評価されている。そのため従来難しいとされてきた直腸がんや食道がん手術にも用いられるようになってきた。
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【放射線治療の最前線】コンピューター制御でがんを狙い撃ち
 放射線治療は、エックス線、電子線、ガンマ線といった放射線を利用して、がん細胞内の遺伝子にダメージを加えることで、がん細胞を破壊する治療法だ。先進医療として注目されている粒子線治療(陽子線治療、重粒子線治療)も放射線治療の一種である。

 放射線治療では、照射する放射線を強くすると、正常な臓器にまで影響を与えるのが欠点だが、最近ではその欠点を最小限にし、外科手術に匹敵する効果を上げる治療法が次々と登場している。例えば、従来の放射線治療はがん組織を中心に、円を描くように装置が動いて放射線を照射するのが一般的であった。それに対して、3次元照射と呼ばれる方法は、あらかじめCT(コンピューター断層写真)でがん組織の立体形状を正確に捉え、組織への影響を計算しながら放線線をあらゆる方向から照射する。正常組織に害を及ぼさない強さの放射線でも、がん組織だけにダメージが集中させることができる。

 さらに最近では、組織に当たる放射線量をコンピューターで正確に計算。放射線の強さを変化させることで、正常組織への放射線量を極力下げることのできる強度変調放射線治療(IMRT)といった方法も普及し始めている。

 放射線治療は、乳がん、大腸がんなど、手術治療の有効性が高いがんでは、補助的な治療法として、術後の再発や転移を予防する手段となっているが、脳腫瘍、副鼻腔などの頭頸部のがん、手術が困難な肺がんなどでは、第一に選択される治療法になっている。

【化学療法の最前線】新世代の分子標的薬が次々と登場
 従来の抗がん剤は、細胞が増殖するメカニズムを抑制する薬剤が使われていたため、がん組織に効果のある薬剤は、正常組織にも一定の作用を及ぼすというものであった。それが脱毛、吐き気といった副作用の原因にもなっていた。

 それに対して、近年登場している薬剤の多くは、分子標的薬と呼ばれるタイプだ。がん細胞は、正常細胞の遺伝子が傷つくことによって産まれ、細胞が無秩序増殖を行うようになる。このとき、がん細胞には「増殖しろ」というシグナルになる分子が届けられるが、この分子をターゲット(標的)にし、その働きを阻害することによって、がんを死滅させようというのが分子標的薬の考え方だ。

 2000年前後から慢性骨髄性白血病や一部の乳がんなどに有効な分子標的薬が登場。現在では、さまざまながんに有効な分子標的薬が登場している。

 分子標的薬の欠点は、ターゲットとしている分子に反応するがんにしか効果がないことだ。同じ薬でも効くがんと効かないがんがあるのだ。そのため化学療法が他の治療法に取って代わるまでには、もうしばらく時間がかかりそうだ。
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ときには主治医に聞きにくいこともある――そこが知りたい! がん医療Q&A
 もし自分や家族ががんになったとき、できるだけ良い治療が受けられるよう万全の体制で臨みたいものだ。病院選びや医療費の問題など医師には直接聞きにくいことについて調べてみた。

【Q】地域にあるがんセンターはどんな病院なの
 検診で発見された大腸がんは、検査の結果、早期のがんであることが分かった。難しい治療で無いことは分かっていても、もしものことを考えると、できるだけ経験が豊富な病院で見て欲しい。例えば、地域にある「がんセンター」と名付けられた病院はどのような病院なのだろう。

A 戦後の医学の進歩で感染症などで死ぬ人が減ったのに対して、増え続けるがん。日本が本格的ながん対策に乗り出したのが1984年で、政府は「対がん10カ年総合戦略」を打ち立てた。全国どこでも質の高いがん医療が受けられるようにすることも、その目標の一つ。そこで各地にがんセンターが設立されたのである。

 現在では、一般医療機関の治療技術も進歩したことから、一般的ながん治療を行う病院、より専門的な治療を行う病院などを明確にし、それぞれが連携しあうことで国全体として質の高いがん医療を実現しようとしている。そして、その中核となる病院として指定されているのが「がん診療連携拠点病院」で2012年4月1日現在、397カ所の病院が指定されている。

 現在は、各地のがんセンターもその一部としての機能を果たしているといえる。例えば、千葉県では千葉県がんセンターを中心として、13の病院を指定。自分が住んでいる場所で、もっとも近いがん診療連携拠点病院がどこかは、各自治体の保健医療の担当部署、保健所などで問い合わせることができる。

【Q】緩和医療やホスピスについて知りたい
 がんという言葉に、やっぱり恐怖を感じてしまいます。もし自分ががんになったとき、苦痛の少ない医療を受けたいし、ホスピスについても詳しいことを知りたい。
A 緩和医療というのは、痛み、吐き気など患者の身体的苦痛や不安など精神的苦痛を和らげ、可能な限り快適な日常生活を送るために行う医療のことである。

 緩和医療には、痛みを軽減するための鎮痛剤治療のほか、身体的苦痛を軽減するための手術治療なども含まれる。従来は、緩和医療に積極的に取り組む医療機関は多くなかったが、最近ではがん診療連携拠点病院を中心に、緩和医療専門の病棟(緩和ケア病棟)を設けている場合も増えている。気になる人は相談支援センターに尋ねるといいだろう。

 ホスピスは、緩和ケア病棟のことをさす場合と、緩和ケア専門の独立した病院を示す場合がある。ホスピスでは医師、看護師、薬剤師だけでなく、作業療法士、医療ソーシャルワーカーなど多くの職種がチームを組んで医療に当たっている。

Q】上手なセカンドオピニオンの受け方
 がんになってから主治医とは深い信頼関係のもとに治療を行ってきた。しかし、自分でも病気についていろいろ調べるうちに、他の医師の意見も聞いてみたくなった。でも、なんだか主治医との信頼関係を裏切るような気がして躊躇してしまう。私は考えすぎなのだろうか。
A セカンドオピニオンは日本語では「第二医の所見」などと訳される。1ページに簡単に解説したように、治療について患者が選択をする場合に、第3者となる医療機関の意見を聞くというものだ。

 かつて日本の医療では、患者は医師にすべてを任せることが良いとされたが、医療の進歩で治療の選択肢が増えた現在では、患者は医師からしっかりした説明を受け、自分で納得のいく医療を受けることが大切だと変わってきた。この概念をインフォームド・コンセントといい、現在では、がん医療の基本となっている。心配しなくてもほとんどの医師が、セカンドオピニオンの申し出を快く受けて、「診療情報紹介書」を作成してくれるはずである。

 そして、セカンドオピニオンを受ける医療機関に連絡して予約を取る。予約日にセカンドオピニオンの担当医の説明を受けたり、必要に応じて必要な検査を受けることになる。

 日本でもセカンドオピニオンの考え方が広く知られるようになったが、実は相談数は増えていないようだ。日本人がシャイなことも理由のひとつだが、むしろ最近では医師の考え方が変わり、インフォームド・コンセントをしっかり実施するようになったからだと考えられている。気になることは、主治医とじっくり話し合うことが、大切だ。


【Q】治療を続けるお金が心配
 がんと宣告されたとき、自分のことより、治療費のことが気にかかった。完治するまで、いったいどれくらいかかるのだろう。家族だけには迷惑をかけたくない……。
A 40代、50代の人では、過去に手術をするような大病を患ったことがない人も多い。そのため、日本の医療費の現状についてよく理解していないことが多いのだ。がんの治療費も、まさに都市伝説のような存在になっている。

 現実には、日本には世界に胸を張れる皆保険制度がある。医療費が高額になったときは「高額療養費」が適用される。この制度は、被保険者が特定の月内に受ける医療の自己負担には、一定の上限があり、それ以上払った分は健康保険組合から還付されるという仕組みだ。

 例えば、国民健康保険の場合、70歳以下で高額所得者でない場合の上限は約8万円(下図参照)だ。医療費が100万円だった場合、3割の自己負担額は30万円だが、約21万円が還付されるのである。

 しかも、がんの手術入院のように、医療費が高額になることが分かっている場合は、あらかじめ健康保険組合に申請しておけば、窓口での支払いも上限額(食事代や差額ベッド代は別)ですむ。

 高額療養費制度は、外来治療でも適用になる。がんの治療費の支払いに困ることは少ないというのが真実だ。
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                      by山口 俊晴さん(がん研有明病院 副院長・消化器センター長)
by syojyu-hansin | 2013-08-05 11:37 | シニアライフ